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シンポジウム

公開シンポジウム「草の根交流と宗教者」
-新しいネットワークを目指してー

日 時 2015年2月7日(土)午後1時30分~5時
場 所 大正大学1号館2階大会議室
(東京都豊島区西巣鴨3-20-1)
(都営地下鉄三田線西巣鴨駅徒歩2分/JR埼京線板橋駅徒歩10分)

 201527日、大正大学において本研究所公開シンポジウム「草の根交流と宗教者 ―新しいネットワークを目指して―」が開催された。近隣諸国との摩擦や悪感情がクローズアップされ、またそのようなネガティブな雰囲気や流れが広がりつつあるように思われる現在の状況において、近隣諸国との地道な交流活動を続けている教団や宗教者の実践に目を向け、現状の流れを好転させるヒントを見出すべく企画された本シンポジウムでは、ミャンマー、台湾、韓国などで交流活動を行っている諸氏が登壇した。

【パネリスト】

・茨木兆輝  アジア仏教徒協会(ABA)会長/ 曹洞宗 西蓮寺 東堂

「ミャンマーで考えたいのちの使い方」

・北川一明  明治学院 学院牧師

「排外主義・宗教原理主義に対して出来ることとすべきこと」

・力久道臣  善隣教 教主/新日本宗教団体連合会理事・九州総支部会長

「在韓被爆者支援と日韓青年交流」

【コメンテーター】

・井上順孝  國學院大學教授

【司会】

・弓山達也  大正大学教授

 茨木氏の発表に先立って、戦争・紛争・貧困・差別などの問題、また多文化共生を目指したはたらきかけを行っているABAの活動について、事務局の青木日震氏より紹介がなされた。大戦で多くの日本兵が戦死したミャンマーにおいて、地元サンガと協力しながら戦死者追悼や平和への祈りを行ったことがABAの設立へとつながったが、以来、諸整備の遅れにより多くの子どもが命を落としている当地で環境整備(浄水施設の建設)・医療・教育支援を30年来継続しており、ここ10年では仏教精神を通じた韓国との青少年交流へも活動の場を広げている。茨木氏は、ミャンマーや韓国での30年来の活動での験談を紹介しながら、あらためて生活の困窮や精神的な苦しみに喘ぐ人々への支援の意義を、また民族的な壁を超える道筋として宗教的なつながりの意義を語った。

 北川氏は、さまざまな例をひきながら、価値の高低が語られたり対立が生じる場合、じつはそれは尺度が異なることによる価値観の違いであること、したがって現実は多様な価値観が競合する価値相対化にならざるをえないこと――とりわけ人文主義においては――を論じた。これに対してキリスト教は絶対神を信じているが、宗教を絶対化することは排外主義や原理主義になってしまう。北川氏は、超越的な絶対神を信じるがゆえに、神ならざるキリスト教自身を相対化するのが本当のキリスト教ではないかと述べた。また、台湾へ日本から学生を連れて訪問している、心の問題を抱えた子供たちの自尊心回復のためのボランティア活動を紹介した。現地の子供たちにとっては、自分たちのために日本から来てくれるというだけで、自尊心を回復させる大きな力となるが、同じ効果は、訪問する学生に対しても表れることが報告された。

 力久氏は、戦前にさかのぼる教団と韓国との関わりの歴史なかで、日本で被爆した韓国の人々が救援を求めている実情を知ったことで、韓国原爆被害者協会(旧韓国被爆者救援協会)を支えるというかたちで支援活動を始めた経緯を紹介した。昭和60年以降は被爆2世世代が両国を互いに訪問し合う青年交流も行っているが、そのなかで、胸襟を開いた交流ができるようになるには長い年月が必要であること(実際は10年ぐらいたってから本音の交流ができるようになったとのこと)、政治的なレベルでは障害も多いと思われるが、文化的レベルでの交流はまた別の問題であり、実際に相互理解の手ごたえを感じていることなどが述べられた。また、交流活動を通して様々な事実を知り、そこから興味をもってかかわっていく事を通して、自分の中にある差別意識に気付き、それを信仰の力で乗り越えていくことの大切さを述べた。

 コメンテーターの井上氏は、コメントに先立って少林寺拳法グループと中国の少林寺との交流活動を紹介しつつ、パネリスト諸氏の発表にもみられたような、活動を数十年単位で継続することの重要性や、支援活動をするにあたって、たんに支援するにとどまらず、次世代のリーダーおよび現地のリーダーを育てる仕組みをつくること―現地で自律した活動ができるリーダーがいることによって活動の実践性や世代継承を含めた継続性が大きく高まる――の重要性を指摘した。また、玉石混交の情報が氾濫する現状において、もっと善意ある具体的な活動の情報を束ねた紹介ツールの存在が重要かつ必要であることが述べられた。

 その後も、交流先それぞれの政治的、経済的、文化的な相違や歴史的経緯の相違による交流のあり方の違い、また、宗教者としてのそれぞれの立場からの関わり方についてなど、参加者を交えた活発な議論が交わされた。

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