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公開シンポジウム「グローバル化の進展と日本の宗教」

全体.png2016220日、大阪国際大学において本研究所主催の公開シンポジウム「グローバル化の進展と日本の宗教」が開催された。近年目立ってきている外国人観光客の増加のみならず、1990年の規制緩和以降増加している外国人労働者など、日本社会への外国人の流入の動きは今後も活発化していくことが予想される。それは、個々人の信仰や教団活動などの外国の宗教の流入や定着を伴っており、日本の宗教にも大きな影響を与えることが考えられる。この問題に対して、日本の宗教界はどのような対応をしているのか、あるいはしていくのかということを考えるべく、本シンポジウムが企画された。

【パネリスト】

 ・三木 英(大阪国際大学教授)

  「近年における在留外国人とその宗教の実態」

 ・大西 英玄(音羽山清水寺 執事補)

  「光ある未来を願って」

 ・佐藤 信行(在日大韓基督教会 在日韓国人問題研究所 所長)

  「21世紀グローバル時代と日本のキリスト教会――移民と教会のネットワーク」

 ・三濱 靖和(天理図書館資料部長)

  「短期滞在外国人に対する布教の試み」

 ・板井 正斉(皇學館大学教育開発センター・准教授・副センター長(COC担当))

  「「お伊勢さん」は「OISESAN」になりうるか――訪れることと暮らすことから」

【コメンテーター】

 ・井上 順孝  國學院大學教授

【司会】

 ・弓山 達也  東京工業大学教授

 三木.png本シンポジウムの中心的な企画者でもある三木氏は、日本社会における在留外国人の推移や現状を総括しつつ、キリスト教、イスラーム、仏教を対象として、在留外国人の増加に伴うニューカマー宗教の定着や活動の様子を、多くのデータや事例を提示しながら紹介した。日本における宗教の多元化は確実に進んでおり、在留外国人たちは自己の宗教文化を知らせたいという意志は強くもち、日本社会に比して積極的な交流の働きかけが見られるものの、現時点では、地域社会や日本 の宗教との交流は進んでいない点を指摘した。そして、ニューカマー宗教の活発な動きに対して、日本人や日本の宗教はどのような対応をしていくのか、という問いを提起した。

 大西.png大西氏は、大衆庶民信仰の拠点の一つであり、外国人を含む多くの参拝客――年間500万人以上で、その約23割が外国人――が訪れる清水寺ではあるが、宗教的、文化的背景を異にした海外からの訪問者であっても、あるいはまた宗教的要素へのなじみが薄い日本人であっても、あくまで信仰の場であること、畏敬の念をもって接する対象であることを正しく伝え続けることの重要性を語った。その意味で日本人と外国人の区別はしないという立場であるが、同時に、伝達手段の多様性が求められているという考えにもとづいて、言語以外の伝達手段としてインスタグラム・サイトなどを運営していることも紹介した。

佐藤.png 佐藤氏は、現在、200万人を越える外国人がそれこそ日本全国各地で暮らしているにもかかわらず、人権政策と社会等法政策がないことに注意を促した。また、日本のキリスト教界の信徒の構成おいては多国籍化と多文化化が進んでいるが、移民たちは母国文化への帰属意識を強くもっていると同時に、東日本大震災の避難生活を通して、一方で同胞のコミュニティを形成し、他方で地域社会への連帯性を強く意識するようになっており、二重のアイデンティティをもっていること、また、自分の子供たちにも、母国の言語や文化を伝え、日本と母国の二つの文化をもってほしいと願っていることが、調査によって明らかになったことを紹介した。

三濱.png 三濱氏は、近年にみられる外からやってくる外国人の増加に対しての対応というよりも、従来から行っている海外布教の一環という位置づけであることを述べ、天理教の信仰をもつ外国人、もたない外国人への教化、布教活動において行われている、各々の体系的な活動とそれを支える各国語での対応の体制を紹介した。また、現在、天理図書館が行っている、古典籍資料をグローバルな環境で活用できるようにするための活動を紹介しつつ、そうした活動の中で、教理にもとづいた日常生活から醸し出される空気を通じて天理教の教えを感じとってもらう重要性を語った。

板井.png 板井氏は、サミットを契機にインバウンドブームにある伊勢志摩をはじめとして、観光地である聖地の現状を紹介しながら、観光施設という面も持つ宗教法人としては、行政とどのように連携していくかということも重要な点であることを指摘し、伊勢の情報発信の試みを紹介した。多くの訪問者がある一方で、定住自立を課題とする地方の小規模自治体において、観光と定住とが接続可能であるのかとどうかということ、そのなかで環境因子としての関係性にも注目することで宗教が果たし得る役割などがあるのではないかということなど、今後の調査、考察の観点や展望を述べた。

 井上.pngコメンテーターの井上氏は、グローバル化が進展している中にも、ともすれば流入する外国人や宗教に対する危機感や排外的意識、蔑視のようなものが見られる点を指摘し、そうした動きに対して日本の宗教界はどのようなことを警戒していかなくてはならないのか、あるいはまた、グローバル化ということに対する世代間の意識や発想の違いというものがあるのではないか――日本のグローバル化が本格化した1980年代以降に生まれた若い世代にとっては、グローバル化した状況が当たり前となっているところがある――といった問いを提起した。

その後も、提起された問いに対する応答や、参加者からの質疑とそれに対する応答がなされ、活発な議論が交わされた。

弓山.png  

    司会の弓山氏

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